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③恐怖より寂しさが大きかった日

入院から手術まで

明日の手術に備える夜。夕食はなく、同室の人に軽く挨拶を済ませると、すぐカーテンを閉めた。静けさの中で、考えが止まらなかった。

当時の私は、普段、誰かの家に泊まることがほとんどなかった。同居していたこともあり、実家でさえ気を使って年に一度顔を出す程度。外泊は二十年ぶりに近い。環境が変わることへの、ほんの少しのワクワク感。そこに明日の手術への不安が重なって、胸の中が落ち着かなかった。

でも、いちばん大きかったのは「恐怖」より「寂しさ」だった。右胸がなくなる。その事実が、ただ悲しかった。

消灯と同時に、病室は静まった。数分後、隣の年配の女性のいびきが想像以上に大きくて、びっくりしたのと同時に、思わず笑いそうにもなった。けれど、正直うるさかった。時計を見ると、もう0時を過ぎている。それでも眠れない。

ただ、ふと思った。どうせ手術中は、嫌でも眠る。だったら今夜は、最後の自分の胸に「ありがとう」と言いながら過ごそう。そう決めたところで、意識がふっと遠のいて――気づいたら眠りに落ちていた。

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