お休みの日の午前中。
家の片付けをひと通り終えて、少しだけ自分の時間を持ちたくなり、近所のスタバへ向かった。窓際の席に座り、コーヒーを一口飲む。店内は静かで、休日特有のゆったりした空気が流れていた。
しばらくすると、私の隣の席に三人のご年配の女性が並んで座った。
自然と距離の近い配置で、肩を寄せ合うようにして座り、楽しそうにおしゃべりをしている。声のトーンも柔らかく、どこか品のある雰囲気だった。
そのうち、赤ちゃんをあやすような優しい声が聞こえてきた。
気になって振り返ると、私の後ろの席に若いお母さんが赤ちゃんを抱っこして座っていた。友達と一緒に来ていて、テーブルにはコーヒーとケーキ。でも、赤ちゃんを抱えたままでは、なかなか手を伸ばせず、ケーキはほとんどそのまま残っている。
それに気づいた三人のおばあちゃまたちが、顔を見合わせて、にこっと笑いながら声をかけた。
「私たちが見ているから、ゆっくり食べなさい」
「大丈夫よ、私たち保育士なの。慣れてるから安心して」
そう言って、自然な動作で赤ちゃんを受け取り、三人で代わる代わる抱っこしながらあやし始めた。
一人が声をかけ、もう一人が手を握り、もう一人が微笑みかける。まるで役割分担が決まっているかのような連携で、赤ちゃんはすぐにご機嫌になった。
ほんの五分ほどの時間。
その間に、若いお母さんは両手を使って、ゆっくりとケーキを食べることができた。ほっとした表情で、何度も頷きながら、安心した様子だった。
赤ちゃんを受け取るとき、
「ありがとうございました」
そう言って、深く頭を下げる。おばあちゃまたちは、
「いいのよ、いいのよ。お互いさまだから」
と、まるで当たり前のことのように笑っていた。
特別なことではない。
誰かが少し手を差し伸べただけの出来事。
それでも、その場に流れていた空気はとてもあたたかくて、
見ているこちらまで、自然と心がやわらぐ時間だった。

